「これだけは譲れない」夫婦のお金:お互いの「こだわり支出」を理解する話し合い方
夫婦それぞれの「こだわり支出」を知ることの重要性
結婚生活が長くなるにつれて、夫婦間でお金の使い道に対する感覚の違いを感じる場面があるかもしれません。特に、お互いが「これだけは譲れない」と感じる、いわゆる「こだわり支出」に対する考え方は、無意識のうちに家計管理の衝突の原因となることがあります。
例えば、一方は趣味や自己投資にお金をかけることに価値を見出し、もう一方は外食や旅行といった家族のレジャーを優先したいと考えるなど、その内容はご家庭によって様々です。これらの「こだわり」は、単なる浪費ではなく、その人自身の価値観や幸福感に深く関わるものであることが多くあります。
お互いの「こだわり支出」とその背景にある価値観を理解し、尊重し合うことは、家計管理を円滑に進めるだけでなく、夫婦関係全体の満足度を高めるためにも非常に大切です。漠然としたお金の不安の背景に、こうした価値観のズレによるコミュニケーション不足があることも少なくありません。この記事では、夫婦それぞれの「こだわり支出」を理解し合うための具体的な話し合い方をご紹介します。
なぜ「こだわり支出」の理解が夫婦関係に影響するのか
「こだわり支出」は、個人のアイデンティティや日々の満足度に直結する要素です。これらを一方的に制限されたり、否定されたりすると、我慢や不満が募り、夫婦関係にひずみを生じさせる可能性があります。
また、お互いの「こだわり」を共有することで、相手の意外な一面や大切にしている価値観を知ることができ、より深い相互理解につながることもあります。これは、お金の話を単なる「節約」や「貯蓄」だけでなく、「夫婦でどのような暮らしをしたいか」という将来のビジョンに繋げる上でも重要な一歩となります。
まずは自分自身の「こだわり支出」を整理する
相手に自分の「こだわり」を伝え、相手の「こだわり」を聞くためには、まず自分自身が何にお金をかけることに価値を感じ、何が「譲れない支出」なのかを明確にすることが役立ちます。
具体的には、以下のような点を考えてみましょう。
- 最近、お金を使って「満足した」「幸せを感じた」のはどんな時ですか?
- 毎月、あるいは毎年、これだけは削りたくないと感じる支出は何ですか?
- その支出は、あなたにとってなぜ大切なのですか?(例:ストレス解消になる、スキルアップのため、家族の思い出作りのためなど)
- もし自由に使えるお金が増えたら、何に使いたいですか?
これらの問いを通して、自分自身の価値観やお金に対する考え方を整理してみてください。リストアップしたり、重要度を書き出したりするのも良い方法です。
相手の「こだわり支出」を知るためのアプローチ
自分の考えが整理できたら、いよいよパートナーと話し合う番です。夫がお金の話を避ける傾向がある場合でも、責めるような口調ではなく、相手の価値観を知りたいという穏やかな姿勢で切り出すことが大切です。
1. 話し合いの切り出し方 「少しお話ししたいことがあるんだけど、今、時間ある?」「最近、家計のこととか、将来のこととか、色々考えてて。〇〇さんはどう思ってるか聞かせてもらえるかな?」のように、相手に問いかけ、始めるタイミングを委ねる形で切り出すと受け入れられやすいでしょう。
2. 話しやすい雰囲気づくり リラックスできる休日の午前中や、食事の後など、時間に余裕があり、お互いが落ち着いている時間を選びましょう。カフェや散歩中など、場所を変えてみるのも有効かもしれません。お互いの意見を否定せず、まずは耳を傾けるという姿勢を共有しておくことも大切です。
3. ポジティブな問いかけ 相手の「こだわり支出」を聞く際には、「なんでそんなものにお金を使うの?」ではなく、「〇〇さんが〇〇にお金を使う時って、どんな気持ちなの?」「〇〇にとって、お金を使うことで満たされることって何?」のように、価値観や感情に寄り添うようなポジティブな問いかけを意識しましょう。過去の楽しかった思い出や、将来の夢と結びつけて話すことも有効です。
「こだわり支出」について話し合う際のポイント
お互いの「こだわり支出」を共有する際は、以下の点を意識してみてください。
- 相手の話を傾聴する: なぜその支出が相手にとって大切なのか、その背景にある思いや理由を丁寧に聞き、理解しようと努めましょう。途中で口を挟まず、最後まで聞く姿勢が信頼に繋がります。
- 自分の価値観を伝える: 相手の話を聞いた後、自分の「こだわり支出」やそれに対する思いを素直に伝えましょう。責めるのではなく、「私は〜という理由で、〜にお金をかけることを大切にしているんだ」というように、「私メッセージ」で伝えるのが効果的です。
- 違いを認識し、受け入れる: 夫婦であっても、お金に対する価値観や「こだわり」が異なるのは自然なことです。違いがあること自体を問題視するのではなく、「こういう違いがあるんだね」とまずは認識し、お互いの価値観を尊重する姿勢を持つことが重要です。
- 家計全体の中で考える: お互いの「こだわり支出」を把握したら、それらが家計全体の収支の中でどのように位置づけられるかを具体的に話し合いましょう。収入に対して、必要な生活費、貯蓄、そしてお互いの「こだわり支出」にどれだけ配分できるのか、現実的な視点を持つことが大切です。
価値観のズレが大きい場合の対処法
話し合いの結果、お互いの「こだわり」に大きなズレがあると感じることもあるかもしれません。すぐに結論が出ない場合や、すべてを認め合うのが難しいと感じる場合は、以下の方法を試してみてください。
- 一度持ち帰って考える: 話し合いで全てを解決しようとせず、一度お互いの意見を持ち帰ってじっくり考える時間を持つことも有効です。
- 譲歩点や代替案を検討する: 一方的な我慢ではなく、お互いが少しずつ譲歩できる点はないか、あるいは、満たしたい欲求に対して他の安価な方法はないかなど、代替案を一緒に考えてみましょう。
- 共通の目標と照らし合わせる: 子供の教育費や自分たちの老後資金など、夫婦共通の将来の目標と照らし合わせ、「この『こだわり支出』は、その目標達成にどのような影響があるか」という視点で考えてみることも、優先順位を決める上で役立ちます。
- 定期的に見直す: 一度決めたことでも、時間とともに価値観や状況は変化します。定期的に「こだわり支出」や家計全体について話し合い、見直す機会を持つことが、お互いの満足度を保ちながら家計を管理する上で重要です。
まとめ
夫婦それぞれの「お金のこだわり」や「譲れない支出」について話し合うことは、一見難しく感じるかもしれませんが、お互いの価値観を深く理解し、尊重し合うための貴重な機会となります。それは、単に支出を管理するためだけでなく、夫婦が共にどのような人生を歩んでいきたいか、どのようなことに価値を置いていきたいかという、より本質的な部分に関わる話し合いです。
まず自分自身の価値観を整理し、次に相手の価値観に耳を傾けることから始めてみてください。感情的にならず、お互いを尊重する姿勢を持つことで、きっと安心してお金について話し合えるようになるでしょう。この話し合いを通して、夫婦の絆を深め、将来のお金の不安を解消する一歩を踏み出していただければ幸いです。